培養室のお仕事~人工授精時の精子調整③~
今回はようやく!
培養室では実際どんな手順で精子調整をしているのか、その方法を具体的におはなししていきます。
人工授精の精子調整には「密度勾配遠心法」を用いています。
これは名前の通り精子の密度を利用したものです。調製によって、死滅精子・未熟精子はできるだけ除去し良好な成熟精子を回収したいのですが、実は死滅精子・未熟精子は密度が低く成熟精子は密度が高いという密度の差があります。この差を利用することで成熟精子を回収するのが「密度勾配遠心法」です。
実際に使用しているmedium(培養液)がこちら。真ん中のmediumがIsolate 90%というものです。
成熟精子の密度1.12g/ml・未熟精子の密度1.09g/ml…つまり成熟精子のほうが重いのですが、Isolate 90%の密度がその中間なので成熟精子は下に沈みやすく、未熟精子は沈みづらくなります。この密度の差で精子の分離ができます。
両端の赤いmediumは、前回出てきましたSSS代替血清を含む洗浄用mediumです。2本使用します。
洗浄用mediumに精液を混ぜたものを、Isolateの上に重ねていきます。(撮影用なので写真では精液は入っていません)2種類のmediumが混ざらず、キレイに2つの層になるよう、慎重に行います。
このような2層の状態にしてから、遠心機で遠心にかけます。すると重たい成熟精子が一番下に沈殿してきます
遠心して得られた沈殿物(成熟精子を多く含む)を再度洗浄用mediumに混ぜて、遠心にかけます
2度目の遠心で得られた沈殿物をシリンジで吸引し、調整が終了になります。
(成熟精子が多く回収され、不要物や死滅精子などはできるだけ除去された状態)
IDとお名前のシールを貼り、看護師に渡して培養室のおしごとは完了です。あとは医師によって子宮に注入されます。