ESHRE 2018 ②
会場ではPGT(胚の染色体の精密検査)やAI・機械学習により妊娠しやすい胚の選択といった内容の発表が多くあり、国内の学会とはまた違った内容も多くありました。その中から特に気になりました、“卵を育てるお皿(培養ディッシュ)について”のニュージーランドのCarpenter先生の発表を紹介いたします(O-137 The impact of dry incubation on osmolality of media in time-lapse culture dishes )。
まず一般的な卵の培養方法ですが、卵の発育に必要な栄養素が入った培養液に、培養液の乾燥を防ぐためにオイルを被せています。培養庫には庫内が加湿されているものと、乾燥しているものの2種類あり、近年では培養庫内のカビ等の発生を防ぐために、多くの施設では乾燥タイプの培養庫で卵を培養していますが、少しずつ培養液の浸透圧*が上がることが問題とされています。
*細胞は細胞膜という膜に包まれています。細胞膜は適切な浸透圧下で細胞を維持し、酸素や二酸化炭素、エネルギーとなる必要な物質のやり取りを行っています。しかし浸透圧が変化することで、やり取りがうまくできなくなります。
卵を入れるお皿にも様々な形状があり、培養液の浸透圧変化をお皿の種類別に比較すると、培養液の上にオイルカバーされている面積比が少ない、すり鉢状のお皿だと培養中の浸透圧の上昇の変化が少ないとの結果でした。
当院でも今年5月から、全ての患者様の卵の培養にすり鉢状のお皿を使用しております。
今年は当院の院長 黄木がESHREにて発表しており、培養士もデータ収集などのサポートをいたしました。今後とも培養室では日々得られるデータをまとめ、解析し、国内外の学会に発表・参加をしていきます。そうして得られた新たな知見を元に培養成績などの向上に努め、患者様の治療のお役に立てるように努めてまいります。