胚の成長 注意点 ②
当院で採卵をした場合、分割胚凍結(or移植)にするか胚盤胞凍結(or移植)にするか、希望を伺います。(こちらの培養期間のちがいについては、よくある質問ページに説明があります)胚盤胞凍結を希望され6日間培養を続けたが、成長が止まってしまい凍結に至らなかった場合に、患者様からよく受けるご質問があります。
“もし今回、分割胚凍結の方を選択していて、この卵たちを3日目の時点で凍結し移植していても、結局は途中で成長が止まってしまうから妊娠は無理だったのですよね?”という質問です。たしかに今回胚盤胞まで成長しませんでしたが、それは“受精から6日間、培養庫という体外の環境に卵をおいて培養した結果”です。
分割胚凍結・移植では3日目以降は“子宮という体内の環境に卵をおく”ことになります。卵をとりまく環境に違いがある為に、確実に“体外で成長が停止した=体内でも同様に停止していた”とはいえないところがあります。
つづいて、成長スピードについてです。
3日目にまだ4分割の状態の卵もあれば、12分割まで進んでいる卵もあり、分割のスピードは様々です。当院では基本的に7分割以上でグレードが良好なものを、分割胚凍結・移植の対象としています。分割胚移植の妊娠率の傾向からしますと、分割が早く進んでいる方が良好な状態と思われます。しかし、3日目の時点で分割が少し遅れているな…という卵でも5日目にしっかり胚盤胞になっていることもあり、この段階でこの後の成長についてすべて判断することはできません。
胚盤胞形成に関しても、4日目にすでに胚盤胞になっている卵から、6日目になって胚盤胞にたどりつく卵もあります。成長が早い4日目胚盤胞については近年様々な報告がでていますが、移植した際の妊娠率が5日目胚盤胞よりも高いという報告もあり(福井ウィメンズクリニック 松山さんら 2018)、成長が早い=良くないたまごというものではないと考えられます。当院でも4日目にすでに胚盤胞になっているものがみられますが、まだ胚盤胞になったばかりの初期段階のものが多く、現時点では5日目の朝にじゅうぶん拡張した(空間が広がって大きくなった)状態で凍結しています。
一方で成長が遅めで6日目あるいは7日目に胚盤胞に到達した卵は、5日目に比べて妊娠率は低下します。また、正常染色体率が5日目胚盤胞より低いという報告もありますので、5日目までに胚盤胞となった卵の方が状態は良いと言えます。