日本生殖医学会 2019
11月7-8日の2日間、神戸にて第64回日本生殖医学会学術講演会・総会が開かれました。ポスター発表をしてきましたので、学会参加の報告をいたします。
*今回発表した内容を含め、今まで当院が発表した演題、論文はHPのトップページ“当クリニックの論文、発表の要約”というコーナーに簡単にまとめられておりますので、興味のある方は是非ご覧ください。
今回は“精子調整におけるSwim up法の有無がICSI後の胚発育に及ぼす影響”という演題で発表をしました。Swim up法については、こちらのブログで“体外受精時の精子調整法”を紹介した際に説明しています。(2019.4.23と5.5更新の記事にて)
世界中で広く用いられているSwim up法ですが、調整中に活性酸素が発生し、それが精子DNAを傷つけてしまうのでは・・・という懸念がされています。また別の機会に詳しくお話ししますが、卵子は侵入してきた精子のDNAを修復してあげる機能をもっていることがあります。しかし修復に力を使ってしまうことで、そのあとの大事な胚発育に影響がでてしまう可能性が考えられます。そこで、今回1つの仮説を立てました。
“調整時にSwim upをしない→精子DNAが傷つかない→DNA修復の必要がない→卵子に負担がかからない→元気に胚が育つのではないか?!“ というものです。
そこで、実際に
◎Swim upをした精子で受精した胚
●Swim upをしていない精子で受精した胚
について、それぞれの胚発育結果を調査しました。
2つのパターンを比べてみた結果、胚発育に差はありませんでした。仮説として立てた、“調整時にSwim upをしない→元気に受精卵が育つのではないか?!“ということは立証できなかったということになります。
期待していた胚発育の向上はみられませんでしたが、Swim upをしないことで胚発育の低下もみられませんでした。つまり、Swim upは省略することができるとも考えられます。培養室では“良いものは取り入れ、不要なものは省く”ことで成績の向上に努めています。