精子の基準値・質向上には…?
では具体的に精子の基準とはどのようなものか、紹介していきます…
精子の基準・検査の項目
精液量 1.5ml 以上
精子の数 15.0×100万個/ml 以上
動いている精子の割合 40% 以上
全ての動いている精子の数(計算上) 15.6×100万個/ml 以上
[WHO 精子の基準値]
これらを基準としており、一般的に良くない精子とは精子全体の数が少ない、動いているものが少ない、もしくはこの両方を意味しています。また、上記の基準値はあくまで理論上、妊娠に最低限必要な精子の数としています。たとえ基準を満たしていてもいい精子であるとは断言できません。
その結果、本当に良い結果?
卵子ではよく耳にする「質」というのは、実は精子にも存在します。質を表す一例として低比重精子(未熟精子)が挙げられます。
以前このブログ上でも取り上げました、「精子の調整」にもありますが、精子には外見上ほぼ同じであっても「重さ」が異なる精子が存在します。この重さは、つまるところ成熟し完成された精子(比重が重い)と、未熟で未完成な精子(比重が軽い)との差異が現れたものであり、卵子までたどり着くのに必要な運動能力の差として顕著に表れます。検査上は運動さえしていれば計測されますので、比重に関係なく結果として提出されます。そのため検査上では良好でも、実際の良好運動精子はもっと少ない可能性があります。また、比重に関してだけでなく内部の遺伝情報に損傷がある場合も考えられるため、たとえ結果が良くても安心することはできません。
精子は毎日作られるもので、生存時間も3日ほどと、決して長くはなく移り変わりの激しいものであると言えます。複数の検査の中で、値の変動が大きかった方もいらっしゃるのではないでしょうか。日々の生活習慣に影響されやすいものであるため、常日頃から注意を払わなければなりません。
精子の向上について
では精子に悪影響のあるものと良い効果のあるものとを下記に列挙していきたいと思います。
月並みなものにはなりますが
・高温下にあること(長時間のお風呂やサウナなど)
→お風呂やサウナはストレス解消にはなりますが、頻度が高いことや、入浴時間があまりに長時間ですと影響があります。
・喫煙
→運動率をはじめとする精子の能力に多大なる影響をもたらします。また外見的変化だけでなく、遺伝子の損傷にも繋がります。
・ストレス
・不規則な生活習慣やバランスの悪い食事
→運動不足や食事、睡眠不足が悪影響となります。
精子の能力向上については
適度な運動と体重(BMI18.5~25)
地中海式の食事(果物、野菜、全粒穀物、魚)
亜鉛やビタミンDの適量摂取…
などを行うことで、精子の改善につながります。
日々の努力で改善を促すほかありません。また、これらは精子だけでなく自身の健康にも影響します。不妊の為だけでなく健康のためにもこれらを改善してみてはいかがでしょうか。とはいうものの、忙しい日々の中で適度な運動や規則正しい食事をすることは容易ではありません。また、禁煙や長時間のお風呂など、それら自体がストレス解消になっているかたもいらっしゃるとおもいます。いきなりすべてを改善していこうとするのではなく少しずつ余裕があればという心持で取り組んでみてはいかがでしょうか。
最後に
不妊治療といえば「女性の問題」と考えられがちですが、男性側の責任というのも女性と同等だとわかっていただけたかと思います。そして何より、「子供」は夫婦二人の力で得られるものです。男性が、自分は基準を満たしているから治療終了ではなく、妊娠に至るまで、二人で治療しているのだという気持ちで臨むのが最善ではないのかと思います。