凍結胚移植についてのまとめ
今までの投稿で胚の融解やアシステッドハッチング(AHA)など、凍結胚移植に関わる事柄をいくつか紹介してきました。
関連する過去の投稿を改めて振り返りながら、今回は胚盤胞の凍結胚移植・胚凍結報告書の妊娠率表の見方について、お話していきます。
採卵をされる際、患者様にはまず新鮮胚移植をするか凍結胚移植をするか選択してもらいます。
胚盤胞培養で新鮮胚移植を選択された場合、移植できる胚があれば採卵の5日後に移植を行います。
凍結胚移植の場合は、採卵した周期に移植は行いません。受精卵のうち当院の凍結基準を満たした胚盤胞は一度すべて凍結されます。(凍結方法について)
新鮮胚移植をご希望でも、移植する基準までしっかり成長した胚が複数あるときは、移植するものを1つ選択し(基本的に1度に移植する胚は1つです)、その他は凍結保存しておきます。
胚を凍結した場合は、培養室から“胚凍結報告書”をメールでお送りしています。そちらに今回凍結した胚の状態(成長の段階や細胞数の評価)・当院におけるグレード別の妊娠率表が記載されています。表が2つあるのは、受精後5日目に凍結した胚の場合と、6日目に凍結した胚の場合で分かれているからです。
この妊娠率表の見方について注意点があります。胚凍結報告書に記載されている胚の状態は「凍結時」のものです。一方で妊娠率表は「移植時」の胚のグレード別で妊娠率のデータを出しています。以下詳しくお話していきます。
胚の融解についての投稿内に記載がありますが、融解は実際に移植をする5~6時間前に行っています。(融解時にAHAも行います。)融解直後の胚は収縮していることが多いですが、この移植までの数時間でほとんどが回復していきます。アルファベット(A・B・C)の“細胞数についての評価”がこの数時間で変わることは稀ですが、胚盤胞の成長が進み、数字で示している“成長段階”が変わることはあります。
例えば“3BC”で凍結した胚が融解後に“3AA”に変わることはほぼありませんが、3BC→5BCに成長が進むことはあります。同様に例えば4BB→5BBあるいは6BBになることもあります。
実際移植した胚の状態は、移植後にお渡しする報告書に記載されています。凍結時は4BBでも移植時に5BBとなっていた場合は、妊娠率としては5BBの欄の妊娠率が該当します。
もちろん凍結時と移植時で成長段階の数字が3や4から変わらない胚もありますが、その時点で成長が止まっているという判断にはなりません。移植までの数時間に成長段階が進まなかっただけで、おなかの中に戻った後に透明帯からでてきて(5,6の状態)しっかり着床することももちろんあります。
みなさんが気になるところだと思いますので、今回は妊娠率の表の見方についておはなししましたが、妊娠率はあくまでデータ上のものです。妊娠率約40%のグレードの胚を3回移植すれば絶対に妊娠するのね、といった保証はありません。
胚が着床し妊娠に進むかどうかは、グレードだけではなく胚の染色体なども大きくかかわってきます。(染色体の検査について)
データ上は妊娠率が高い5AAの胚でも、染色体異常があれば無事出産まで至ることは難しくなります。逆に4BCといったCを含む胚でも、1回の移植で出産まで至ることもあります。今回のブログを読んで妊娠率表を正しく見ていただけたらと思いますが、この数字にとらわれすぎず、あくまで1つのデータ・目安としてご参考ください。