レスキューICSIのむずかしいところ
前回の記事で、“レスキューICSIをする・しないの基準、レスキューICSIをするのはどんな卵か”ということをお話ししましたね。今回は…
・レスキューICSIをした卵が正常に受精しなかった!なぜレスキューICSIしたの??しないほうがよかったのでは…??
・IVFをした卵が未受精だったといわれた、成熟卵で受精できる状態だったのに。なんでレスキューICSIしなかったの?
という疑問に対してお話していきます。(※今回もわかりやすさ重視のため、詳細については割愛している部分があります)
レスキューICSIは【成熟はしているけど精子が入っていないと思われる卵】が対象だとお話ししましたが、「この精子が入ったと“思われる”とか、入っていないと“思われる”ってなに??結局入ってるの入ってないの?!」と感じませんでしたか?
実はレスキューICSIの難しいところは、ここにあります。
採卵当日の夕方の時点で、成熟しているかどうかはしっかり判別がつくのですが、精子が入ったかどうかは確実には判断ができないのです。
(卵のどこを見て判断するか・受精兆候とは具体的に何かはこちら、極体についてはこちらをお読みください)
確実に判断できないのは
・精子がすでに入っているのに受精兆候が出ていない卵
・精子が入っていないのに受精兆候がある/受精兆候があるように見える卵
というものがあるからです。
そのため、採卵翌日…↓↓
受精兆候で予測した結果と違う…ということが起こりえます。
こうなると、「じゃあ、採卵翌日に確実に受精しているかどうかわかってから、受精していていない卵だけにICSIすればよい話では??なにも無理に当日夕方に判断しなくても…」となりますよね。
そうできるととっても分かりやすくてよいのですが、確実に判断できなくても当日夕方にする理由があります。
卵は成熟さえしてればいつまででも受精できる!ことはなく、受精できるのは排卵から1日程度です。つまり、採卵した場合は採卵当日中に精子が入っていく必要があるのです。
以上が、レスキューICSI希望をしたのに多精子受精や未受精が起こってしまう理由でした。
前回からどちらかというとデメリットについてお話しすることになりましたが、もちろんレスキューICSIをすることで、IVFでは受精できなかった卵を受精卵にもっていける、という大きなメリットはあります。IVFだけの希望だったら1つも受精卵が得られなかったけど、レスキューICSIをしたことで受精卵が得られた!ということも珍しいことではありません。
また、レスキューICSIで多精子受精や未受精が続いてしまう、IVFでなかなかしっかり受精卵が得られない…という場合は、採卵した卵の様子・経過などを培養士と医師とで確認し、受精方法をはじめからICSIに検討するなどします。その場合もお二人がご納得して治療が進められるよう、担当医と相談しながらの治療になりますのでご安心ください。