Double Stimulationについて
当院では、2021年から「Double Stimulation=Duo」と呼ばれる採卵方法を積極的に取り入れています。
通常の採卵では、
①月経2〜3日目に来院し、卵巣刺激の方法を決定
②月経4〜7日目にかけて卵巣刺激の注射
③月経8日目以降に卵胞の発育状況から、採卵日を決定、実施
その後、採卵した卵子の受精・培養・移植や凍結という流れで1周期が終了します。
Duo採卵では、上記①〜③の過程に続き、
④1回目の採卵後に再び卵巣刺激の注射を開始
⑤卵胞の発育状況から、2回目の採卵日を決定、実施
その後、卵子の受精・培養・凍結を実施します。
通常の採卵では、卵胞期(卵子が排卵される前の期間)に卵子を育て、採卵(≒排卵)を行いますが、Duo採卵では、黄体期(卵子が排卵された後の期間)にも卵子を育て、2回目の採卵を同一周期で行うことができます。
つまり、月経1周期に2回の採卵ができるということです。
がんを発症した患者様など、採卵回数を短期間でなるべく増やしたい場合に行われる方法の1つですが、
当院では
①卵巣予備能低下のために1回あたりの採卵数が期待できない女性
②育つ卵胞にバラつきがある場合
などの女性に推奨しています。
推奨理由は2つあります。
①卵巣刺激の1つの方法として、GnRHアンタゴニストを使用し、排卵を抑制する方法がありますが、必ずしも排卵を抑制できるわけではありません。よって、卵巣予備能が低く、発育卵胞数が少ない人は、採卵前に排卵し、卵子が得られない場合があります。
一方、黄体期での卵巣刺激では、黄体ホルモンによって下垂体が抑制されているため、内因性のLHサージ(排卵を促す波)が起きにくく、排卵を避けやすくなり、結果、採卵数を増やすことが期待できます。
LHサージについて
https://yanaihara.jp/blog/602#more-1049
②卵巣刺激によって発育する卵胞にバラつきがみられた場合、一番良く育った卵胞(主席卵胞:16〜20㎜)に合わせて採卵します。通常の採卵では、主席卵胞以外の小さい卵胞も一緒に採卵します。なぜなら、「残存卵胞」として、今後の治療に影響してしまうからです。よって、未熟卵が多くなることがあります。
一方、Duo採卵では、1回目の採卵で大きい卵胞のみを採取し、残した小さい卵胞を再度刺激して発育させ、それを2回目の採卵で採取することで、未熟卵の数を減らすことが期待できます。
自然の摂理に反し、卵子に何かしら影響するのでは?と考える方もいらっしゃると思いますが、すでに論文では、卵胞期での採卵とDuo採卵との間に、胚盤胞到達率やPGT-A実施後の正常胚率(染色体に異常がないとされる胚)に有意差はないと発表されています。
human reproduction
もっと効率的に治療をうけたいという方は、診察時に担当医もしくは看護師に詳細をお聞き下さい。当院でも今後症例数が増えましたら、治療成績をご報告したいと考えております。