神奈川県の不妊治療専門クリニック 矢内原ウィメンズクリニック

精子凍結について

培養部 培養部ー精子について

精子凍結

精巣内精子採取術(TESE)や射出によって得られた精子を液体窒素(-196℃)で凍結し半永久的に保存する技術のことです。

世界で観測された最も寒い気温は約-98℃(南極にて)だそうですが、精子や胚を凍結保存する液体窒素はそれよりもはるかに低温ですね。細胞を傷つけることなく凍結するために、とても低い温度である液体窒素を使用しています。

精子凍結の目的は、ご主人様の都合により採卵日や人工授精日に精子が持参できない場合や、採卵当日採精をしても受精に必要な数の精子が採取できない可能性がある場合などに、あらかじめ精子を保管しておく、というものです。採卵日にお仕事の出張が重なった・普段は単身赴任している…という場合でも、精子凍結をしておくことで、いつでも採卵した卵子に顕微授精(ICSI)を行うことが可能になります。

精子凍結の方法について

精液をそのまま凍らせると氷晶と呼ばれるつららのようなものができ、細胞が傷ついてしまうため、精子は生存することができません。そこで、以下のような手順で凍結を行います。当院では液体窒素蒸気凍結法を用いています。

 

凍結手順

  • 精液を調整(具体的な調整方法はこちらと同様です)

採取された精液を遠心処理することで細菌や白血球等の不要な物質を除去し、運動性の高い精子を集めます。その後、精子凍結に適するか医師が判断をしたうえで、凍結する本数を決め凍結をします。

 

②精子を凍結

精子が機能と構造を損なわないよう精子用の凍結液と調整した精液をよく混ぜ、凍結用チューブに入れます。発泡スチロールを液体窒素の上に浮かべ、その上にチューブを乗せ、まずは液体窒素の蒸気で5分凍結します。

はじめは液体窒素の蒸気で徐々に低温にしていくことで細胞が傷つくことを防ぐことができます。そのあと、液体窒素の中に入れ保存します。

 

液体窒素蒸気法で用いるチューブとケーン

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

TESEによる精子の回収では上記のチューブではなく、極細のストローにいれ、同様にタンクで保存します。

 

凍結による影響

精子も細胞ですので、寒さに強いものもいれば弱いものもいます。凍結液の中には保護剤が含まれてはいますが、凍結により精子が損傷を受け運動率が低下します。低下率は50%前後とされ、当院では体外受精(IVF)での治療は行っておらず、ICSIのみ行っています。運動性が見られた精子をICSIに用いますので、新鮮精子を用いたICSIと凍結精子を用いたICSIでは妊娠率に差はないと言われています。IVFや人工授精では精子の力で卵子まで到達する必要があるので運動性が重要ですが、ICSIでは運動性が低くても生存していれば受精することが可能です。

 

 

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