GM-CSF含有培地の使用が開始
当院では新たに移植用培養液「GM-CSF含有培地」の使用を開始します。
そもそも「GM-CSF」って何?
“顆粒球マクロファージコロニー刺激因子:Granulocyte Macrophage colony-stimulating Factor)”
感染防御に関与する白血球の一種である顆粒球とマクロファージの増殖を促進するサイトカインの一種です。
サイトカインとは
細胞同士のコミュニケーション方法のようなものであり、増殖・分化等の指示を他の細胞に伝える役割を持った糖タンパク質の事をいいます。
GM-CSFは受精後、卵管および子宮内に分泌されます。胚は基本的に自己に必要なサイトカインは自分で分泌していますが(自己分泌)、GM-CSFは胚が自己分泌できないサイトカインのひとつであり、胚と母体に発生・成長を相互的に促進させ双方の成長を同調せる働きを持っています。
具体的な効果について
・胚が受けるストレスの抑制
・胚の栄養取り込みの促進
・着床および発生能の向上
・細胞の生存およびアポトーシスの正常化
※アポトーシス(組織にとって、必要に応じたあらかじめ決められている細胞死のこと)
体外受精はその名のごとく母体から卵子を取り出し、培地(卵管、子宮内液を模した培養液)にて疑似的に胎内環境を模した状態で受精および胚を育てるという方法になります。この培地は人工的につくられたものであるため、胚発生に必要な栄養素などは網羅しておりますが、サイトカインをはじめとする生体物質は含まれておらず、完全な母体再現の環境とはいいがたいのが現状です。
GM-CSFはこの通常の培地には添加されていない生体物質の一つであり、これを含有する培地をもって培養、移植を行うことで胚をより生体内環境下に近づけ、種々の機能をもってして着床・妊娠率を高めるという意義を持っています。
どんな人に勧められるか
・流産を繰り返したことのある方
・着床失敗経験のある方(移植後、反応なしが複数回など)
・原因不明の流産を繰り返す方
特に流産のご経験のある方はGM-CSFの分泌が低い傾向にある為、サイトカインの補填という意味で有効であると考えられています。
引用
“体外受精胚培養における顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)”
https://fertility.coopersurgical.com/wp-content/uploads/ARTScientific_No4_201812_%E6%9C%80%E7%B5%8220190212.pdf
“EmbryoGen®”
https://fertility.coopersurgical.com/wp-content/uploads/EmbryoGen-ja.pdf
“F-GM™ Step-1 SAGE”
https://fertility.coopersurgical.com/wp-content/uploads/SAGE_1_step_GM_CSF.pdf