神奈川県の不妊治療専門クリニック 矢内原ウィメンズクリニック

ヒアルロン酸含有培養液について

培養部 培養部―卵・胚について
ヒアルロン酸含有培養液とは

当院の移植において使用されている、培養液です。

 

基本的に、胚盤胞評価におけるTE(栄養外胚葉)の評価が「C」の胚を移植する際や保険適用下で治療をされる患者様に対し使用しています。

本培養液は粘性があるため、接着剤の様に子宮内膜に接着しやすくなる働きを持っています。胚を培養する際に用いられる培養液の1つであり、「移植用」に当たります。ヒアルロン酸が主要成分であり、このヒアルロン酸がいわゆる接着剤の役割を果たします。

ヒアルロン酸と聞けば化粧品や目薬など身近に使用している薬品等が思い浮かぶかと思います。摂取するものとしてのイメージが強いように思えますが、ただ塗るもの飲むものという側面だけではありません。

 

そもそもヒアルロン酸って?

ヒアルロン酸はヒトの体のいたるところに存在しています。毛髪から血管に至るまで幅広い組織に存在し、水分保持・潤滑作用等の役割を担っています。その保水力は僅か1g程度のヒアルロン酸で2〜6Lもの水分を保持することができると言われており、保湿という点で非常に優れた性質を持つことが分かるかと思います。

 

 

子宮内膜にも存在するヒアルロン酸

子宮内膜下に存在するヒアルロン酸には大別して2種類の役割・効果が存在します。一つは、胚の保護作用です(例:下記画像)。移植した胚をヒアルロン酸が被覆することで、ヒアルロン酸自体の水分保持・潤滑作用によって胚の受ける物理的・化学的なストレスを低減する役割を持っています。特に体外での環境は胚の受けるストレスが大きくなる場合があるため、生体下よりも大きな意義を持つことがわかるかと思います。


二つ目が、着床の促進です(例:下記画像)。胚の成長段階における「脱出後」(詳しくは 胚のグレードについて 胚盤胞)の胚表面上と子宮内膜上にはそれぞれ、「CD44」と呼ばれるヒアルロン酸と特異的に反応する抗体が存在しており、これがヒアルロン酸を介して結合することで、着床の可能性を向上させます。

Adherence compounds in embryo transfer media for assisted reproductive technologies (Review). The Cochrane Collaboration 2014

 

最後に

培養液を変更するだけなので、患者様が何か面倒な手続きをされる必要もありません。また、使用することで胚に対して悪影響があるなどといった事もないため、本培養液を使用することへのデメリットは殆どないと言えます。

上図:ヒアルロン酸配合培地(青:グラフ右)とヒアルロン酸非配合培養液(白:グラフ左)との着床率の差

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