Nature . 2025 Oct より
世界の論文から
Sperm sequencing reveals extensive positive selection in the male germline
精子のゲノム解析により、男性生殖系列での広範な正の選択が判明
この精子の遺伝子変異を詳しく調べた研究により、父親の年齢が上がるにつれて子どもに病気を引き起こす可能性のある変異が増えることが明らかになった。研究チームは24~75歳の男性57人から採取した精子サンプルを、高精度DNAシーケンシング技術(NanoSeq)で解析した。その結果、精子形成過程で特定の変異が選択的に増加し、子どもの疾患リスクを高める可能性があることが示された。30歳の男性では精子の約2%が疾患関連変異を保有していたのに対し、70歳では約4.5%に上昇していた。また、50歳以上の男性では精子の3~5%が何らかの病気を引き起こす可能性のある変異を含んでいた。精子では1年あたり平均1.67個の新規変異が生じるが、特定の変異を持つ細胞は他の細胞より速く増殖するため、年齢を重ねるほどその割合が高くなる。研究チームは、このように増えやすい変異が起きる遺伝子を40個発見し、そのうち31個は新たに確認されたものであった。これらの多くは、子どもの発達障害やがん素因症候群と関連しており、父親の高齢化が子どもの遺伝的疾患リスクを高めるメカニズムを示し、従来の母親中心のリスク評価に加えて父親側の要因も重要であることを明らかにした。
