神奈川県の不妊治療専門クリニック 矢内原ウィメンズクリニック

体外受精妊娠の分娩

当院の論文学会発表

著書著作、講演等
矢内原敦
日本医師会生涯研修講座 神奈川 2019

少子化という言葉が一般的になったのは、最近の事ではありません。
2015年に出生数は年間100万人を切っています。
男女ともに、結婚をする年齢が上昇し、女性が初めて子供を得る年齢が2015年から2016年にかけて35歳を超えました。
鎌倉市においては年間の出生数がおよそ100人ごと減り、年間出生数1000人を下回るのは時間の問題であり、人口動態は少子高齢化により逆三角形となっています。
経済の基盤が崩れ、暮らしへの影響は今後免れないでしょう。
その現実と問題点を切実に考えている人はどのくらいいるのでしょうか。
体外受精という生殖医療が一石を投じ、あたかも不妊治療が確立されたかのような印象を与えましたが、すでに40年の月日が経ち、もはや体外受精は最先端の不妊治療では無くなりました。
現在本邦では20人に1人が体外受精による妊娠となっています。
日本は世界に類を見ない体外受精大国(採卵周期25万/年、凍結胚移植周期18万/年)であるにも関わらず、実はその治療成績は芳しくありません。
本講演の前半では本邦における出生率にまつわる現状と体外受精の統計、今後行われていくと思われる出生前診断、着床前診断などを中心に、後半は体外受精妊娠の分娩についてお話をする予定です。
一般にあまり知られていないのが、体外受精後の妊娠、分娩経過についてです。
妊娠をすれば、自然に生まれてくるものと一般的には思われているかもしれません。
しかしながら、体外受精後の妊娠は、胎盤や臍帯の異常、母体の妊娠糖尿病、妊娠高血圧腎症などの合併症の発生が多くなる事がすでに報告されています。
対象母体年齢が高い事がその原因とされますが、母体の年齢以外の要因も示唆されています。
妊娠経過中に合併症がなく、経膣分娩を予定している方を対象に、当院における統計検討を行った結果、体外受精妊娠の場合、陣痛促進、吸引鉗子分娩といった医療介入による分娩が、自然妊娠の分娩と比べ有意に多い事がわかり、さらに緊急帝王切開においては、その可能性が自然妊娠分娩の有意に3倍高い事がわかりました。
分娩後においては、産後出血(800ml以上)も多く、分娩後管理の徹底も必要な事が示されています。
体外受精妊娠の分娩は、一般的な分娩と比べ十分な注意と管理が必要です。
妊娠、分娩とは極めて動物的な、原始的な現象にも関わらず、社会的な要因も相まって、ここ数十年で大きく変化をしています。
講演最後には臨床の現場から浮き出てきた、社会背景が原因と思われる産後の問題点などを提起したいと思います。

一覧に戻る

初診予約